【いわき新市長誕生】市政の基盤立て直しを(9月6日)
現職と新人合わせて四人が立候補したいわき市長選で、新人の内田広之氏が初当選を果たした。新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置が適用され、市民の健康と命をどう守るかが喫緊の課題となる中で、有権者は元文科官僚で地方行政の経験もある内田氏にかじ取りを託した。医療の充実や産業振興などで市の基盤を立て直し、浜通りの中核都市にふさわしいまちづくりを期待したい。
いわき市はクラスター(感染者集団)が多発し、危機感が高まっている。経済団体は中小事業所を対象に職域接種を模索したが、医療従事者を確保できず断念せざるを得なかった。市は必要なワクチン量を確保できたとして八月二十日から五十九歳未満のワクチン接種券を順次発送したが、市民からは「遅すぎる」との声が出ている。
新型コロナウイルス対応を巡ってあらわになったのは医療体制の脆弱[ぜいじゃく]さであり、中でも医師不足は深刻だ。厚生労働省の統計では、二〇一八(平成三十)年に医療施設に従事するいわき市内の医師数は人口十万人当たり一六七・一人で、全国平均二四六・七人、県平均の二〇四・九人を大きく下回る。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故発生前の水準は回復しているものの増加のペースは鈍い。市医療センターが平成三十年十二月に開院したが、高度医療の機能を十分に発揮していないとの指摘がある。
本紙が選挙期間中に実施した市民対象の世論調査で、最優先で取り組むべき課題のトップは「新型コロナウイルス感染症対策」であり、生活環境の維持・向上に必要な対策として「医療体制の充実」が最多の六割近くを占めた。市民の不安と行政への要望が如実に表れた格好だ。
健康は生活の根幹だ。いわき市民の安心・安全を保障するためにも、内田氏は医療体制を充実・強化し、広大な市内で医療格差を生じさせない医療体制づくりが急ぎ求められている。
選挙戦では、医療以外にも防災、人口流出、産業振興などの課題が提起され、各候補は企業誘致や地場産業振興による雇用創出、人材育成などの処方箋を示した。傾聴すべき内容が多かったが、個別の施策を実施し課題を克服した上で、いわき市の将来像をどう描くのか読み取れなかったのは残念だ。
三十万都市のいわき市は人口減による活力低下が懸念されている。内田氏は有効な施策を機動的に運用して、希望の持てる将来展望を描いてほしい。(鞍田 炎)
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