follow me

 



2021年9月3日金曜日

デルタ株を制圧するのは国家権力か科学の力か - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス

 

デルタ株を制圧するのは国家権力か科学の力か - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス

3-4 minutes

 今年の5月21日、広州市レイ湾区の75歳の女性がデルタ株に感染した(ルワンダからの渡航者を通じて感染した。レイは、草かんむりに、カが3つの中国文字)

 当局は、ただちに濃厚接触者26人を特定して隔離した。それとともに、感染者の居住地域を中心に8万人を超える住民に一斉にPCR検査を行なった。29日にはレイ湾区全域で、店内飲食、対面授業、および生活に必要不可欠でない活動が禁止された。

 ところが、隣接する佛山市で3人の感染者が確認された。そこで31日には、広州市から省外に移動する者に対して、接触通知アプリ「グリーン健康コード」とPCR検査の陰性証明の提示を義務付けた。

 また、感染者の居住地域や会社・学校の所在地を「封鎖式管理」地域とし、厳格な自宅隔離と14日間で4~5回のPCR検査を実施した。

 さらに、感染者が訪れた地域と周辺地域を「入ることはできるが、出られない」という「抑制管理」地域とした。

 6月2日には広州市の新規感染者数が15人とピークになった。しかし、厳しい措置が効果を発揮し、6月15日には広州市で新規感染者がゼロになった。7月3日には「グリーン健康コード」とPCR検査の陰性証明が解除された。

 デルタ型の感染力からいうと、10日程度で広東省全体(約1億2000万人)に感染が広がる可能性があった。それを1カ月もたたぬうちに完全に抑圧したのだ。

● それでも抑え込めず、 ワクチン接種者も感染

 ところが、これだけ厳しい措置が取られているにもかかわらず、その後もデルタ型の感染者が発生している。

 7月20日には南京市の空港で感染者が確認された。8月10日には感染が数十都市に拡大した。8月11日には中国東部の浙江省にある世界有数(コンテナ取扱量では中国第2位)の大型港・寧波港で、港湾作業員が科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)製ワクチンを2回接種していたにもかかわらず、デルタ型に感染した。そのため港の大規模コンテナターミナルが操業を停止した。

 中国では無症状であっても陽性者は病院に運ばれる。

 そして、「健康コード」によって濃厚接触者と判断された場合はいうまでもなく、濃厚接触者の濃厚接触者であっても例外なく隔離される。

 8月10日時点で中国国内の隔離者は約5万人。感染者1人につき20人以上が隔離されていることになる(日本経済新聞、2021年8月24日付)。こうした中国の徹底した対処と日本の現状を比較すると、あまりの違いに声も出ない。

 仮にいまの日本で中国並みの対応をしたら、首都圏の住民はすべて自宅に閉じ込められて隔離され、3日に一度のPCR検査をしなければならないだろう。

 中国人にしてみれば、「いまの日本ではデルタ型に対して何の対策もしておらず、感染拡大を野放しにしている」としか見えないだろう。

● 行動制限で経済活動に支障 強権に頼らざるを得ない中国

 私は、日本でも中国並みの対応をすべきだといっているわけではない。なぜなら、感染拡大は抑止できるが、そのためのコストがあまりに大きいからだ。

 実際、中国における厳しい対策のコストはすでに目に見える形で現れている。

 前述した寧波港は現在でも操業が再開されておらず、世界の物流に影響を与えている。それだけではない。ホンダの合弁工場が停止し、また観光地が相次ぎ封鎖されるなど、経済活動に影響が出ている。8月中旬の空港稼働率は中国全体で38%でしかない。

 中国国家統計局が8月16日に発表した7月の主要経済指標によると、小売売上高は前年同月比8.5%増であり、6月の12.1%増から大きく下がった。自動車の売上高は1.8%減となった。野村ホールディングスは、中国の2021年通年のGDP成長率の予測を8.9%から8.2%に引き下げた。

 中国でのコロナワクチンの接種回数は、8月12日までの時点で18億3245万回となり、2回の接種が完了した人の数は7億7700万人とされている。

 しかし、国産ワクチンの有効性は50~78%で、90%を超えるファイザー製やモデルナ製より低い。実際、中国で免疫を獲得している人の割合はインドやインドネシアを下回っているという。

 そうした事情があるので、強権的措置に訴えざるを得ないのだ。しかし、そうすれば経済活動への影響を避けられない。世界で最も深刻な問題にさらされているのは中国だと言うこともできる。

 なお、中国が厳しい措置を取り続ける限り、海外旅行の解禁も遠いと考えざるを得ない。これは、日本の観光業や来日客の購買目当てのデパートなどには大きな打撃になるだろう。

● 感染拡大も食い止められず、 経済拡大も実現できない日本

 では、日本のように「感染拡大を野放し」にすれば経済活動が活性化するのかと言えば、もちろん、そんなことはない。

 8月16日に公表されたGDP(国内総生産)の2021年4~6月期速報値は、2四半期ぶりのプラス成長になりはしたものの、実質GDP成長率は前期比0.3%、年率で1.3%増にすぎなかった。

 中国の成長率予測を「引き下げた」といっても、IMFによる日本の21年の成長率予測2.8%に比べれば、比較にならぬほど高い。また、中国の感染者は現在、着実に減少しているとの報道もある。症状のある新規感染者数は8月17、18日とも6人だった。日本とは比較にならない。

 つまり、日本は感染拡大も食い止められず、経済拡大も実現できていないのだ。

● ワクチンで押さえ込もうとする米国 英仏独なども追加接種を計画

 アメリカでは、7月上旬には1万人未満にまで減っていた1日当たりの感染者数が、8月には15万人以上に急増した。ニューヨーク国際自動車ショーなどのイベントは中止され、グーグルやアマゾンなどはオフィス復帰計画を延期した。レストランのオンライン予約も失速状態だ。

 ただし、入院患者の約97%がワクチン未接種だ。年齢も若く、多くは20~30代だという。ワクチンは重症化や入院、死亡の予防に大きな効果があり、この点はデルタ株についても変わらないと言われる。

 こうした状況を背景に、アメリカ政府は8月18日、9月20日からファイザーとモデルナ製ワクチンの追加接種(ブースター接種)を始めると発表した。イスラエル、フランス、ドイツなども、高齢者や免疫力の弱い人に追加接種を行なうこととしている。

 イギリスでもデルタ株がイギリスの新型コロナウイルスの新規感染者数を急増させている。しかし、死者数の急増は起きていない。人口の7割以上がワクチン接種を完了しているため、新規感染者数が急増しても死者数を少なく抑えているのだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿